自作小説『ふりむいてよキャプテン』ifストーリー~小野くんとあみちゃんの場合~
こんにちは、『優月の気ままな創作活動』にお越し頂きありがとうございます。
管理人の春音優月(はるねゆづき)と申します。
今回の記事では、優月の執筆四周年記念として書き下ろしたSS第三段を載せておきます。
いつもはひとつかふたつなんですが、四周年はけっこうがんばって書いてますね( ´∀`)
本編の小説情報
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・ 『ふりむいてよキャプテン』
【野球部】【恋】【青春】【仲間】
2015.5.15~2015.09.22
野球のルールは全然知らないけど、キャプテンかっこいいからマネージャーになってみた。野球に興味のなかった女子高生が、三年間を通して恋したり色々悩みながらも野球部で青春を送るお話。
ifストーリー『小野くんとあみちゃんの場合』
『ふりむいてよキャプテン』
ifストーリー~小野くんとあみちゃんの場合~
(もしも小野くんとあみちゃんがくっついたら、こうなる(かも))
「今だから言える話だけどさ、本当は高校の時、あみのこと気になってたみたいなんだよね、あいつ」
高校を卒業して二年、久しぶりに野球部同学年が集まった。卒業してからみんなに会うのはもしかしたら初めてかな?
そんな久しぶりの集まり、居酒屋の一室で少し顔を赤くしたにっしーから言われた言葉。
あいつって言うのは、小野くんのことだよね。野球部のキャプテンで、にっしーの親友で、それから……私の好きだった人。
「あ-、うん。それ知ってる。
引退の時にそんなようなことは言われた」
小野くんは当時ずっと一人の子に片思いしてたから、結局私の気持ちは届くことはなかったけど、私のことも少しは意識してたと最後に教えてくれたんだ。
おつまみの枝豆をつまみながら、なんでもないことのようにそう言うと、知ってんだと少し驚いたような顔をするにっしー。
「にっしーは、もっと前から知ってたの?」
「……うん、俺とマサが大げんかして、一時期口も聞かなかったことがあったの覚えてる?」
「覚えてるよ。部活のTシャツのデザインがきっかけとか聞いたけど」
「いや…….そうなんだけど、実は部室にみんなが入ってくる前に、ふたりで話してたんだ。その、あみのこととか」
にっしーは話しながらも、向こうの方でもりあがっている中の一人、小野くんをチラチラ見ている。
「それで、あいつがあまりにも頑固だからだんだん腹立ってきて……。自分もあみのことが気になってるくせに、俺にばっかり気を使うし……」
本当はまるちゃんや部活のことよりも、俺に遠慮して、あみの方に行けなかったんじゃないかな。
和やかなお酒の場の雰囲気とは一転、眉を寄せて真剣な表情で言われたにっしーの言葉に、一瞬だけ小野くんをチラ見してから、すぐに首を横にふった。
「それはないよ、にっしー。
小野くんはそこまで私を意識してない」
本人が言ってたんだから、多少は私のことも気にしてくれてたんだろうけど、小野くんの好きな人は私じゃなくて、確かにまるちゃんだった。
はっきりそう伝えると、にっしーからはうーん……と納得できていなさそうな、煮え切らない返事が返ってくる。
「どっちにしても、もう過去のことだから」
「……そういえば、さっき彼氏と別れたって言ってたよな?マサも最近彼女と別れたらしいよ。あの時は部活やまるちゃんや俺のことがあったけど、今だったら……」
「本当にもう過去のことだから、にっしー。今小野くん見ても何も思わないもん。
坊主だった頃の方がかっこよかったかな」
お互いフリーなんだから、と暗にくっつけようとしてくるにっしーの言葉を遮り、また首を横にふる。
あれから、二年もたった。
大学入ってからそれなりに恋もしたし、いつまでも小野くんだけを引きずってるわけじゃない。
「はは……、そっか」
「そうそう。にっしーは彼女と順調?」
「まぁ……、うん」
照れたように笑うにっしーを、照れるな照れるなとつつく。
にっしーは、大学に入ってから出来た彼女と長続きしてるみたい。にっしーはすごく優しいから、彼女のこともすごく大切にしてるんだと思う。
にっしーとも色々あったけど、にっしーが幸せそうだと素直に嬉しい。にっしーが穏やかに笑ってると、なんだか安心する。
***
「あみ、送っていけなくてごめんな。
マサ、あみのことよろしくな」
居酒屋の飲み放題の時間が過ぎ、解散となった時。これから彼女と約束があるらしいにっしーは、しっかりと小野くんに私を託しながらも、そわそわした様子で駅の方に走っていく。
私の家までここから歩いて十五分くらいだし、送ってもらわなくても大丈夫なんだけど……。
ていうか、なんでよりによって小野くん……。ただでさえ話すことないのに、にっしーとあんな話をした直後だから、よけい気まずい。
「ちょっと大丈夫?」
なんかふらふらしてるし……。
ほんのり顔を赤くしている小野くんは、むしろ私が送っていった方がいいんじゃないかってくらいに、ふらついてる。
あんまりお酒強くないのかな?
「うん、ありがとう。大丈夫」
ふらついてる小野くんを支えようと腕をつかむと、そのまま手をぎゅっと握られた。
「……大丈夫じゃないみたいだね。相当酔ってるでしょ」
いきなり手をつないでくるなんて、と呆れた目で小野くんを見ると、いや、とか否定してくる。どこがだ。
「高校の時さ、一度だけクリスマスにデートした時も手を繫いだよね。そのすぐ後にまるちゃんに会って、置いてかれたけど。あのときはショックだったな」
「あのときは、ごめん。
まるちゃんのことや、部活に、にっしーのこと……考えることが多すぎて、自分の気持ちがよく分からなかった」
「や、やだな、そんな本気にとらなくても……」
今だから言える話として、軽く思い出話でもしようと思っただけなのに、思いのほか、真剣な答えが返ってきて焦る。
「だけど、あのとき、手を繫いだ時、すごくドキドキした。今も、ドキドキしてる」
「今もって……、な、なに言ってるの?
分かった、やっぱり酔ってるんだ」
「酔ってない」
「じゃあ、……チャラくなった?」
「違う、好きな人にしか言わない」
真顔のまま答える小野くんに、繫いだままの手が熱くなってきた。だって、何言ってるのか意味分からない。
あのときドキドキした。今もドキドキしてる、まではまだ理解できる。その後が完全に理解不能。
「待って、よく分からない。
彼女いたんだよね?」
「いた。けど、いま宮崎さんが好きだと思った。それに、大学入ってからも何回も宮崎さんのことを思い出して、後悔した。
あのとき、にっしーを傷つけることになったとしても、自分の気持ちに素直になればよかったって」
あのときって、どの時だろう。
全然分からない。
真顔のまま淡々と話す小野くんは、相変わらずの鉄仮面振り。だけど、そんな鉄仮面の告白を聞いて、おかしいくらいにドキドキしてる。
もう、小野くんのことは忘れたはずなのに。きれいさっぱり忘れたはずだったなのに。
「嘘だ……」
「本当だよ。好きだ」
それを聞いた瞬間、こらえきれずに涙が流れた。もう思い出したくないのに、あの時の気持ちが蘇ってくる。
「今さら言われても、困る。
もう私は小野くんのことなんて、…….忘れた。もう、好きじゃない」
「いいよ、分かってる。
今度は俺が宮崎さんを追いかけるよ。
また会ってくれる?今度は、二人で」
だめだ…….、やっぱり私……。
この人のことがどうしようもなく好きみたい。
彼氏と別れたばっかりなのに、もうすっかり忘れたはずだったのに……。
「追いかけてくれなくてもいい」
私の言葉を違う意味でとらえたのか、え?と少し戸惑ったような様子の小野くんに、勇気を出して口を開く。
「追いかけなくても、もう好きだから……。私も、好きだから」
それを聞くと、繋いでいた手を離し、距離を詰めようとしてきた小野くんを待ってと静止する。
「明日になったら、記憶ないとか言わないよね?」
「言わない」
「もう……、置いてったりしない?」
「絶対に置いていったりしない」
小野くんは昔から何考えてるか分からないし、突拍子もない行動するし、なぞ宇宙人だけど、絶対に嘘だけはつかないひとだ。
すごく、誠実な人だ。だから、信じてもいいんだろうけど……。
まだ一歩を踏み出せずに戸惑っている私の手を、小野くんは両手でぎゅっと握る。
「ずっと大事にする」
もうなんか色々なものがこみ上げてきて、涙が止まらなくなった私の頭を大きな手で優しく撫でられる。
それから、小野くんは私の腕をつかんで、顔を近づけてきたので、そっと目を閉じた。
(おしまい)
あとがき
『ふりむいてよキャプテン』というタイトルなのに、本編では結局ふりむいてくれなかったキャプテン(小野くん)笑
そういう結末にすることは最初から決めていたのですが、もしふりむいてくれたらどうなるのかな?と思って書いてみました。
可愛いものと猫と創作が大好きな物書き。
執筆ジャンルは、恋愛(TL/BL/GL/TSF)、ファンタジー、青春、ヒューマンドラマ、など雑多。年下ヒーローと年下攻めを特に好みます。
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