自作小説『私の彼氏は中国人留学生』番外編~私の夫は中国人~
こんにちは、『優月の気ままな創作活動』にお越し頂きありがとうございます。
管理人の春音優月(はるねゆづき)と申します。
今回は、執筆三周年の記念として過去にブログで書いたSSを載せたいと思います。(自作小説『私の彼氏は~』本編後のSSなので、本編のネタバレを大いに含みます。)
本編の小説情報
小説のリンク先は、小説投稿サイト ベリーズカフェ です。
・『私の彼氏は中国人留学生』
【異文化ラブコメ】【大学生】【日中恋愛】
2013.09.05~2013.11.06
中国人留学生に恋しちゃった女子大生が、異文化に戸惑いながらも一生懸命恋をするお話。
番外編『私の夫は中国人』
・『私の彼氏は中国人留学生』 結婚後番外編
結婚してから二年、三ヶ月前初めての子どもが生まれた私は、夫が中国人だということをのぞいては、どこにでもいる普通の二十代の主婦だと思う。
大学の時に知り合ったこの中国人夫。
無駄にプライドは高いし、どうでもいい嘘はつくし、今までたくさんの問題を起こしてくれたけど、そのおかげか毎日はしないし、それに意外と出来た夫かもしれない。
***
「そりゃあかんわー。
こどもが泣いてても、まずは旦那を優先せなあかん。ちょっとまってねーって声かけて、先にごはんの支度したらな。
男ってめんどくさいやろー?」
それは本気でめんどくさい。
ふたりのこどもなんだから、少しくらい待つとかあやすとかできないものなのかな。
キッチンで夕食の準備をしていたら、テレビから聞こえてきた関西弁の女の司会者の言葉に全力で同意した。
出産したことをきっかけに夫婦の仲が悪くなり、離婚が増えているらしい。
産後クライシスって言うんだっけ。
「こういう男の人って多いみたいだね。
暁明は違うよね?
この前自分で優しくていい夫って言ってたもんね?」
自分で自分のことをほめちゃうあたりが暁明なんだけど。少しほめとけば、色々やってくれちゃうあたりが扱いやすかったりもする。
ベビーベッドの近くのソファーに座ってテレビを見ている中国人夫の暁明に声をかける。
「うん、もちろん」
本当かどうかはあやしいけど、なんの迷いもなく暁明がうなずいた次の瞬間、ベビーベッドで寝ていた息子の明が泣き出した。
「ごめん、お腹すいたのかも。
授乳するから、夕ごはんちょっと待ってもらってもいい?」
作りかけの夕ごはんはそのままに、暁明がベビーベッドから抱き上げた明を受けとる。
「いいよ、ゆっくりどうぞ。その間に俺が夕食作っておくよ」
「えっ、いいの?助かる!
やっぱり暁明と結婚して、本当に良かった。こんなにいい夫は他にいないよね」
「でしょ?」
日本人相手なら白々しくなるくらいにヨイショすると、気分良く夕ごはんを作り始める暁明に心の中でガッツポーズをした。
とりあえずほめとけばいいってくらいに、単純なのはアレだけど、暁明はごはんの支度が遅いとか文句を言うどころか、家事にも協力的だし、ものすごくいい夫だと思う。文句なんていったらバチがあたるくらいに。
だけど、ひとつだけ不満があるんだ。
***
さらに、半年後。
八ヶ月になり、だいぶ大きくなった明を連れて暁明の実家の上海にきていた。
「あらー、だいぶ大きくなったわねぇ。
ほら、ばぁばのとこにおいで」
顔を合わせると挨拶もそこそこに、私が抱っこしていた明をほぼ奪い取るような形でお義母さんが抱っこする。
私と暁明の結婚に大反対だったおかあさんもおとうさんも、明が生まれてからはすっかり和解。……というよりも、毎日のように電話をかけてきて、明は元気?明はどうしてるの?明明明……と初孫フィーバー中。
「私が明くんを見ていてあげるから、あなたたち二人で外食でもしてきたら?」
「いいんですか?じゃあ、お言葉に甘えて……」
明はもちろん可愛いけど、一日中マンツーマンで面倒を見ている私にとっては、やっぱりたまには息抜きする時間もほしい。
おかあさんにとっては、孫をひとりじめしたいだけかもしれないけど、私にとっては好都合。ありがたい申し出に遠慮もしないでいこうとすると、浮かない顔の暁明。
「お母さん一人で見れるの?変なことしたり、変なもの食べさせたりしないでよ」
「失礼ね、しないわよ。
勝手に食べさせたりしなきゃいいんでしょ?」
しぶる暁明をおかあさんと二人でなんとか説得して、無理矢理ひっぱっていく。
「暁明なに食べたい?」
「明、大丈夫かな?
泣いたりしてないといいけど……」
「少しくらい泣いても、元気なら大丈夫だよ。ねぇ、それより……」
「明お腹すかせてないかな?」
「大丈夫だよ、出かける前に飲ませてきたから」
「おかあさんオムツかえてくれるかな?」
「大丈夫……って、暁明!」
せっかく二人きりで出かけるめったにない機会なのに、いつまでも上の空の暁明にいい加減キレそうになる。
明が生まれてからというものの、ご両親と同じく、明明明…….と暁明は明のことばっかりなんだ。
キスとかの回数だって減ったし。こどもがいるから前みたいにが難しいのは分かってるけど、それにしたって…….。
まだ二十代なのに、こんなの枯れちゃうよ。
「あっ!ちょっとここで待ってて!」
しかも話の途中で走ってちゃうし。
まだどこに食べに行くか決めてないのに……。
明のためのものでも見つけたのかな。
あんなに大恋愛して結婚したのに、暁明はもう私のことを明の世話係くらいにしか思ってないのかも……。
贅沢な悩みだって分かってるけど、私だってたまにはひとりの女として愛されたいよ。
上海の街にひとりポツンと立ちすくみ、ためいきをつく。
***
「はい、これあげる」
十五分後、暁明は手土産を持って帰ってきた。手渡された紙袋をなんだろうと、がさがさ開ける。
「えっ!これいいの?
前ほしいっていったら、そんなお金があるなら明に服買ってあげたいって言ってたのに」
紙袋から出てきたのは、私が昔から大好きな中国のグループの最新アルバムのDVD。しかも、中国限定盤で日本では手に入らないやつだ!
そこまで貧乏ってわけでもなければ、暁明はケチでもない。
だけど、母親になってもいまだに芸能人のDVDを見てはキャーキャー言っている私を暁明は良く思ってない。というよりも呆れている。
「たまにはいいよ。いつもがんばってくれてる美月に、お礼。
だけど見るなら俺が仕事行ってる時に見てね。そのグループ全然興味ないから」
「うん!ありがとう!暁明大好き!」
暁明のイヤミにも動じず、まだ信じられない気持ちでDVDを抱きしめる私を見て、暁明は少しはにかみながら笑った。
「明、いまごろなにしてるかな?」
また明ですか……。
ここは俺も好きだよとか言ってくれるところじゃないの?まぁ暁明は昔から好きとか、めったに言ってくれたことないけど、それにしても……。
「お昼寝してるかもね。
本当に暁明って、明大好きだよね」
「うん、明のためなら何でもできる。
明は俺の宝だよ。
ずっと、好きなひととのこども作ることが夢だったんだ」
好きなひと……。
まだ二人出会ったばかりのころは結婚するなんて夢のまた夢で。こどもができるなんて思ってもなかった。それが今は……。
毎日生活に追われてつい忘れそうになっちゃうけど、そう思うと、好きなひとと二人のこどもと一緒に暮らせるなんて、それだけで幸せなことだ。
「美月、何食べたい?」
何ヵ月ぶりかに私の手を握り、暁明は食べに行く場所を探し出す。
「私はね……」
すぐに私も彼の手を握り返した。
少し形は変わったかもしれないけど、暁明はあの頃と変わらず私を愛してくれてるんだ、そう確信して。
(おしまい)
あとがき
数年前に書いたものなので、かなり文章がひどいですね(;´∀`)
本編もひどいですが、こちらの番外編も中々ひどい。読み返したら恥ずかし過ぎて自分を埋めたくなりました(笑)
載せるかどうか迷いましたが、自分への戒め(え?)のために、そのまま載せておきます。
全作品自分にとって大切な作品ですが、長編は特にキャラクターやストーリーに思い入れがあるので、本編後の後日談や番外編を色々考えたりするのが好きです。あんまりダラダラ載せるのも蛇足になりそうだし、本編後の展開は読んで頂いた方に自由に想像していきたいので、小説投稿サイトに後日談を載せたりはあまりしません。
でもこのブログまで見てくださっている方はあまりいらっしゃらないだろうし、ここにはちょっとした小話やお遊び的なものも載せていきたいなと思っています。これが正史というわけではなく、あくまでifストーリーとして広い心で捉えてくださると有難いです(;´∀`)
また他の作品の番外編や後日談も少しずつ載せていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
可愛いものと猫と創作が大好きな物書き。
執筆ジャンルは、恋愛(TL/BL/GL/TSF)、ファンタジー、青春、ヒューマンドラマ、など雑多。年下ヒーローと年下攻めを特に好みます。
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