【小説執筆】お仕事の実績サンプル⑨

こんにちは、『優月の気ままな創作活動』にお越し頂きありがとうございます。
管理人の春音優月(はるねゆづき)と申します。

自分の創作作品も執筆していますが、文章関連のお仕事もさせて頂いております。
こちらのブログに載せられるものは公開許可を頂いた作品だけですが、これまでにもいくつか実績サンプルを掲載させて頂きました。

お仕事実績①
お仕事実績②
お仕事実績③
お仕事実績④
お仕事実績⑤
お仕事実績⑥
お仕事実績⑦
お仕事実績⑧

今回の記事では、また新たに公開許可を頂いた作品を掲載させて頂こうと思います。

異世界GL

サンプル公開

「わあ……っ。素敵なお部屋ですね、オボロ様」

雪が降りそうなくらいに冷え込む年の瀬。
趣のある木造の温泉旅館についたオボロとヒスイは、和室に入った瞬間に目を輝かせた。

普段二人が暮らす家とは違う雰囲気ではあるが、清潔で落ち着いた和室。部屋の窓から見える景色は針葉樹林が広がっていて、ずっと眺めていられそうなくらいに綺麗だった。

それを見て思わず感嘆の声を上げるヒスイに、オボロもそうだなと即座に同意する。

旅館と用意された部屋がすっかり気に入った二人は、その部屋でくつろいだり、出された夕食を楽しんだりしていたが、仲居に勧められて露天風呂に入ることになった。

しかし、……。

(どこを見ればいいのか分からないよ……っ)

お湯に髪が入らないように髪の毛を手ぬぐいの中に入れた二人は、二人きりの露天風呂で不自然に距離をとり、終始目を合わせられないでいた。

今晩はお客も少ないし、せっかくだから今のうちに露天風呂に入ってきては?と仲居にすすめられるがままに来たはいいものの、裸で二人きりということに今さらながらに気づいた二人はオロオロと視線をさまよわせている。

遠くの方にはお城が見えるし、岩に囲まれた露天風呂は絶景であった。

本来であれば、女性二人なのだから気兼ねすることなく露天風呂を満喫すればいいのだが、実は二人は恋人同士であった。

(オボロ様とは同じ女性のはずなのに、どうしてこんなにドキドキするんだろう)

オボロと一緒に住み始めてから一週間後、脱衣所で服を脱いでいるオボロを偶然見てしまい、ヒスイはそこで初めてオボロが女性であることを知った。

オボロ自身は自分が女性であることを隠していたつもりはないが、整った凛々しい顔立ちのオボロのことをヒスイが勝手に男性だと思い込んでしまっていたのである。

オボロのことをちょっといいなとこっそり思っていたヒスイは、オボロが女性であると知って少しショックを受けていたが、そのあとしばらくしてオボロから想いを告げられた時はさすがに驚きと戸惑いが隠せなかった。

たしかにオボロのことはかっこいいとは思っていたが、そもそも女性を恋愛対象として見たこともなかったし、その時は断ったのだが……。

後日お試しで良いから付き合ってみないかと改めて申しこまれ、そこまで言ってもらえるのならと結局付き合うことにした。

オボロが女性だということもあり、最初はあまり乗り気ではなかったヒスイも、一緒に過ごすうちに徐々にオボロの人柄に惹かれていく。

そして、お試しをやめて正式に付き合うことになってから一ヶ月が過ぎたが、その間二人の間には何も進展がなかった。

どちらかというと地味な見た目のヒスイは、転生前にいた日本でも恋愛とは縁がなく、一度も恋人が出来たことがない。

そんなヒスイの初めての恋人が女性で妖怪だなんて何が起きるか分からないものだが、実はオボロもオボロで誰かと付き合うことは初めてだった。

二人とも恋愛初心者で奥手のため、どう進めていいのか分からず、手を握ることさえままならない日々が続いている。

キスさえもしたことがないほど初心なのに、いきなり裸で二人きりは難易度が高過ぎる。

ヒスイの体をあまりジロジロ見ては申し訳ないと思っているのかオボロはさっきからずっと視線をそらしているし、ヒスイは初めてオボロの体を見た時は同性であることに気づきショックを受けていたのに、今はなぜかオボロの体にドキドキする自分に気づき、戸惑いとときめきと感じていた。

(こんなにドキドキするってことは、私は本気でオボロ様のことが好きってことだよね。分かってたけど、改めて好きって感じると恥ずかしい……)

オボロの誠実さや優しさ、一緒に過ごすうちに彼女自身の魅力に惹かれ、女性であるとか妖怪であるとかそんなものを飛び越えて好きになってしまった。心から好きだと感じたから、正式に付き合うことを決めたわけだが、特に進展もなかったし、こんな状況で改めて彼女が好きだと感じてしまったヒスイは恥ずかしさを募らせていく。

どんどん顔が赤くなっていったが、温泉の湯でのぼせているのか、オボロにのぼせているのか、ヒスイ自身も分からなかった。

しばらくの間二人は会話もなく、目を合わせることさえも出来ずにいたが、やがてぱらぱらと雪が降り始める。

始めの方はぱらぱらと降っていた雪がしんしんと降り続き、すぐに周りの岩や地面に雪が降り積もっていく。

「綺麗だな」

真っ白な雪景色の中露天風呂に入るというのも風情があったが、その絶景を好きな人と一緒に見ていると思うと、さらに格別に見えた。

思わずオボロの口から本音がポロリと溢れると、ヒスイも顔を赤くしながらもこくりと頷く。

「そうですね。本当に、綺麗です……」

(オボロ様とこの景色を見ることが出来て、本当に幸せです。オボロ様もそう思ってくれていたらいいなぁ……)

二人は目を合わせてクスリと笑い合ったが、すぐに我に返り、慌てて目をそらしていた。

露天風呂に二人きりというまたとない絶好の機会でも進展せず、まだまだ道のりは遠い初心すぎる二人だったが、雪の降るなか露天風呂に入ったことは二人の中で忘れられない一生の思い出になったことだろう。

のぼせそうになるまでその景色を楽しんだが、露天風呂を出て着物を着るまでは相変わらず目も合わせられないままだった。

脱衣所でもお互い照れて大変だったが、何とか着物を着て部屋に戻った。しかし、部屋にぴったりと隙間なくくっついた布団が敷かれていて、またそこで二人は固まってしまう。

きっと二人が露天風呂にいっている間に仲居が敷いたのだろうが、この敷き方はどう考えても……。

(私たち、仲居さんに夫婦だと思われたのかな。……私もオボロ様のことを初めは男性だって誤解してたし、二人で旅館にきたらそう思われてもおかしくないし、実際恋人だけど、でもでも……)

他人から夫婦だと思われているという事実にヒスイの頭は沸騰寸前になり、温泉で温まった体がますます熱くなっていく。

(続)

あとがき

以前書かせて頂いた作品の別バージョンを書かせて頂きました。関係性は前回から変更となりましたが、今回もとても可愛いらしいお話で、私も楽しく書かせて頂きました。
今回もキャラクター名は変更させて頂いております。

獣人系BL

サンプル公開

「あ……、エドどうしよう……。
僕、なんだか……したくなってきちゃったかも……」

バイト帰りにエドの家に遊びに来ていたフランは遠慮がちにエドを誘ったが、フランはなんとなくこうなることを知っていたのか特に驚いている様子はなかった。

「発情期なんだろう?君がしたいなら、僕は構わないよ」

フランの赤色の瞳は、いつも不安げで弱気だ。気弱でヘタレなフランは、エドからのはっきりとした同意がなければ、きっと少しも彼に触れることはできないだろう。

密かにフランに片想いをしているエドは複雑な気持ちを押し殺し、今日もいつものようにフランの誘いを断ることはしなかった。

オリーブ色のおさげと赤ずきんが特徴的なフランは158㎝ほどの小柄な体格で痩せ気味ではあるが、これでも狼系の獣人であり、定期的に発情期を迎える。

発情期を迎えたフランがある時エドと一線を超えてしまったことをきっかけに、二人は定期的に交わるようになった。

元々はカフェでバイトをしているフランが仕入れのためにエドの魚屋に通ううちに自然と親しくなったのだが、そのうちにエドはフランに好意を抱くようになったため、発情期を迎えたフランを受け入れることには抵抗がなかった。

しかし、片想いの相手とそういった行為に及ぶことに複雑な感情を抱かないと言えば嘘になる。

もちろん合意の元で一線を超えたのだが、31歳のエドは20歳のフランとは一回り近くも差があるし、わざわざこんなオッサンを好きにならないだろうと思い込んでしまっていた。

自分よりもかなり背が高くそれなりに筋肉のついた褐色の肌に触れるフランの手は、エドに特別な感情を持っているように思えたが、フランはそれには気がつかない。

同性同士で愛し合うのも珍しいことではないし、同性婚も特別視されることではないが、たとえ発情期に交わったとしても同性間では子はできない。

子ができなくても、大好きなエドだからしたいと思っているのに、どうしてエドはそれに気がつかないんだろう。一応自分を受け入れてはくれるが、自分の好意に気づく気配もないエドをフランは内心じれったく思っていた。
(続)

あとがき

こちらもご依頼様のご希望でキャラクター名を変更させて頂いております。(念のために年齢も変更させて頂きました)
私も獣人も両片思いも大好きなので、とても楽しく書かせて頂きました。

最後に

ご依頼者さまの創作キャラクターさんの小説執筆のご依頼は、世界観を壊していないか不安もあるのですが、大切なキャラクターさんの物語を書かせて頂けることはとても光栄なことですね。そして、やっぱり喜んで頂けるととても嬉しい……♪

お仕事の実績, 創作活動

Posted by 春音優月