自作小説『ふりむいてよキャプテン』後日談~空白の時間~
こんにちは、『優月の気ままな創作活動』にお越し頂きありがとうございます。
管理人の春音優月(はるねゆづき)と申します。
今回は、昔のブログに置いてあったSSをこちらのブログにお引っ越しさせました。
『ふりむいてよキャプテン』という青春ものを読んで頂いた方に感謝を込めて書いたSSで 、本編よりも甘さがプラスされた(かもしれない)後日談です。
誰とくっつくか思いっきり分かってしまうので、なるべく本編読了後に読んで頂くこと推奨ですが、特に本編を読む気がない方や、ネタバレ気にしない方はよろしければSSだけでも読んでいってください。( ´∀`)
本編の小説情報
小説のリンク先は、小説投稿サイト 野いちご です。
・ 『ふりむいてよキャプテン』
【野球部】【恋】【青春】【仲間】
2015.5.15~2015.09.22
野球のルールは全然知らないけど、キャプテンかっこいいからマネージャーになってみた。野球に興味のなかった女子高生が、三年間を通して恋したり色々悩みながらも野球部で青春を送るお話。
後日談『空白の時間』
『ふりむいてよキャプテン』後日談~空白の時間~
「誰かの友達?この後何してるの?
予定ないなら、メシでもいかない?」
少し肌寒くなった、とある秋の日の休日。
自分の家からそこそこ近い大学で、野球の練習試合をフェンスの向こうで見ていたら、試合終了後、ショートの位置を守っていた人に声をかけられた。しかもちょっとかっこいいなと思って見てた人。
「ちょっと先輩、俺の彼女です」
でも彼氏いるし、しかもその彼氏から誘われて試合見にきた、と断る前に。
大学のユニフォームから私服に着替えたにっしー……いちおう私の彼氏、が話している私たちに割り込んできた。
「なに?にっしーの彼女なの?
そっか、残念。にっしーと別れたらメシ行こう」
「やめてくださいよ、本当に。
そもそも先輩彼女いるじゃないですか」
なんだ彼女いるんだ……。
ただの冗談だったのかと複雑な気持ちになっていると、にっしーはちょっと困ったようにその先輩を見てから、私の手をとって無言でひっぱっていく。
***
あれから、ほとんど会話もないままに電車に乗って、そのままにっしーの家にきた。
にっしーの家にくるのも何年ぶりになるんだろう。何年ぶりかにきたにっしーの部屋は以前と同じように片付いているけど、やっぱり会話がなく、妙に気まずい。
「言っとくけど、先輩彼女いるから」
「さっきも聞いたよ。いてもいなくてもどっちでもいいよ」
ようやく話しかけてきたと思ったら、唐突に蒸し返してくるにっしーに、その話題を終わらせようときっぱり興味ないと返す。
「……そう?試合中さっきのひと見てなかった?」
「見てないよ?」
「絶対見てた」
「……ごめん、本当のこと言うとちょっと見てた」
一度は否定したものの譲らないにっしーに、ほんの少しだけ後ろめたいとこのあった私は、ついそれを認めてしまった。
高校の時みたいに私はもうマネージャーじゃないんだから、試合中全員平等に見なくてもいいはず。むしろ、彼氏であるにっしーしか見なくてもいいぐらいだけど、……。
「やっぱり。絶対タイプだと思ったよ。
あみの好みはよく知ってますから」
……。たしかににっしーの言うように、さっきの人はタイプだったから、ちょっとだけ見てた。でもほんとにちょっとだけで、変な意味はないよ?
さっきの人しかり、今までイイナと思ったのは、みんな同じような系統の人。見た目は声かけにくそうな雰囲気の佐藤先輩とか小野くんとか、それから大学で付き合った人も。
にっしーだけ、ちょっと違う。にっしーもまあ……かっこいいとは思うけど、優しそうな感じで系統が違うんだ。大変失礼だけど、もともとタイプではなかった。
「別に深い意味はないんだよ?
ただあのショートの人かっこいいなぁと思って、目の保養で見てただけ。
だって、にっしーはいつでも見れるし、わざわざ見なくてもいいかなって」
「うわっ、なにそれひどい」
ため息をついて、ジト目で私を見るにっしー。フォローを入れたつもりだったけど、どうやら余計まずいことになったらしい。
にっしーは付き合い始めてから、LINEも電話もまめにくれる。それに、大学は違うしバイトも部活もして忙しくても、会うためにちょこちょこ時間作ってくれるし、優しいし、何も不満はない。
でもうーん……、にっしーとは友達期間の方が長いから、いまいち甘い雰囲気になれないというか。高校の時からよく知っているのもあって、試合見ても、きゃー!にっしーかっこいいとか、今さらそんな感じではないんだよね。
冷めてるとかではないんだ、もちろんにっしーのことは大好きだし、うん、大好き、……なはず。目の保養と彼氏は別だよね?
「私のことばっかり言うけどさ……、にっしーだってあのマネージャーの子と仲良さそうだったよね。もしかして前付き合ってたとかだったりして」
「え?誰から聞いた?」
仲良そうと言うほどでもないけど、普通に話していたマネージャーさんとにっしーを思い出して、話題をそらすために言ったただけなのに。
突然に挙動不審になったにっしーに、どうやら本気で彼女はにっしーの元カノらしい、と確信した。
「にっしーってマネージャー好きだよね」
「俺別にマネージャーが好きってわけじゃないよ。前の彼女とは部活中はほとんど話したことなかったし。
一年の秋から講義がかぶるようになって、それから話すようになったんだよ」
私だって大学入ってから何人かと付き合ったし、にっしーだって一人や二人付き合ってたっておかしくない。にっしーがモテないわけないし……。だけど、その元カノが今も近くにいるマネージャーって、なんか私としてはちょっと嫌だ、というか心配……。
「……ふーん、どっちから告白したの?」
「どっちからって……、言わなきゃダメなの?」
言いたくないのか困ったようなにっしーに、言わなきゃダメと言うと、さらににっしーは困った顔をしつつも、話をつづけた。
「あっちからだけど……」
「そうなんだ。別れた後も、大学でも部活でも会うんだよね……。もしかしてまだ好きだったり……」
なんか自分で言ってて悲しくなってきた。
にっしーが浮気なんてできる性格じゃないことは、私が誰よりも知ってるし、それににっしーは絶対に私を悲しませるようなことはしないって信じてるのに、なんでこんなこと言っちゃうのか。
にっしーはそんな私との距離をつめ、うつむいた私の手を握った。
「ないない!絶対ないから!
もういまは本気でお互いなんともおもってないし、あみが心配するようなことは何もないからな」
「付き合ってた時は好きだったんだよね?」
「付き合ってた時は、……うん、好きだったよ」
こんなこと聞かなければ良かったのに、つい聞いてしまって、案の定その答えにショックを受けてしまった。
好きじゃなかった、と答えられても、それはそれで複雑。仮にも一時は付き合ってた人をそんな風に言うにっしーなんて嫌だし。
きっとにっしーがなんて答えても、ショックを受けただろうから、やっぱりこれは聞いてはいけない質問だったんだ。
付き合ってたんだから、多少なりとも好きだったよね……。私だって、付き合った人はそれなりとはいえ好きだったし。
それは仕方ないことだと分かっているのに、大学入ってから離れてた期間の、私の知らないにっしーを知っている人がいると思うとなんだか悲しくて。それがぬぐいきれなくて、なんだか泣けてきた。
「なんで泣くんだよ……。
不安にさせたならごめん。
でもほんとに何もないから」
「……ごめん、帰る」
うわーもうこれ面倒くさいパターンだよ。
にっしーがなんでもないって言ってるのに、こんなちょっとしたことで泣いたりするうざい女にはなりたくなかったのに。今まで彼氏が元カノの話とかしてきても、イラッとしたことはあっても泣いたりしたことなんて一回もなかったのに。
なんでこんな……。
立ち上がると、にっしーに腕をひかれ再びフローリングに引き戻される。帰らないで、とにっしーはどこか切羽詰まったように言って、それから私を抱きしめた。
「前の彼女のことは、当時は好きだったよ。ただこれだけは言えるけど、あみが俺の彼女でいてくれるなら、俺は絶対に揺らがない自信あるよ。
引退した時言ったこと、あれ本気だから」
「…….十年も待てないかも」
いや、でもあれから何年か経ったから、もう十年もないかな……?なんて、そんな計算をしながら、にっしーの背中にぎゅっと手を回した。
(おわり)
あとがき
本編では、すれ違っていた期間が長く、いちゃあまなシーンがほぼなかったので、後日談として書いてみました。今改めて読み返すと、とんでもなく恥ずかしいんですが……(笑)
小説投稿サイトの本編に載せるまでもないしょうもない話や、ちょっとした小話、お遊びのifストーリーはこちらのブログに載せていこうと思います。
昔のブログに載せていたものもお引っ越しさせていますが、新しいものも随時載せていく予定なので、そちらもよろしくお願いいたします。
可愛いものと猫と創作が大好きな物書き。
執筆ジャンルは、恋愛(TL/BL/GL/TSF)、ファンタジー、青春、ヒューマンドラマ、など雑多。年下ヒーローと年下攻めを特に好みます。
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