自作小説『たとえどんなに~』番外編1~誘惑勝負編~


こんにちは、『優月の気ままな創作活動』にお越し頂きありがとうございます。

管理人の春音優月(はるねゆづき)と申します。

今回は、野いちご登録二周年の記念として、過去にブログで書き下ろした処女作の番外編SSを載せたいと思います。(本編後のお話なので、本編のネタバレを大いに含みます。)

ハルちゃん
ハルちゃん
ネタバレ大丈夫そうでしたら、本編未読の方も良かったら読んでいってね♡

優月
優月
よろしくお願いします!

本編の小説情報

小説のリンク先は、小説投稿サイト 野いちご です。

『たとえどんなに辛いサヨナラが待っていたとしても』
『続・たとえどんなに辛いサヨナラが待っていたとしても』
【青春】【友情】【芸能界】【アジア】
2012.08.17~2012.08.23
2012.10.16~2013.02.12
優月の処女作。メインキャラクターは、台湾で活躍する国籍混合男女混合のダンスボーカルグループのメンバー。同じ夢を目指すメンバーそれぞれの悩みと、友情恋愛を描いたお話。

小説紹介のブログ記事はこちらから

番外編『仲良しの秘訣~誘惑勝負編~』

『たとえどんなに辛いサヨナラが待っていたとしても』番外編

「え?兄さんの気持ちが知りたい?」

仕事に行く準備中、自分たちが出演しているCMが流れているテレビを横目で見ていたら、同居中のメイリン姉が嵐になりそうな一言を落とした。

外国で歌手として活動をする私にとって、同じグループのメイリン姉は姉妹のような存在でもあり、頼れる存在でもあるんだけど……。

時々、強引だったり、ついていけなかったりすることがある。今みたいに。

「うん。だから、兄さんのこと誘惑して。
代わりに私が、カスミの彼氏の気持ちを確かめるから」

つまり、姉さんはこう言いたいんだ。
最近付き合い出した彼氏の気持ちを確かめるために、私に一芝居うて、と。

私たちは、それぞれメンバーと付き合ってる。
メイリン姉は、みんなの兄さんのようなうちのリーダーと。私は、年下のメンバーと。

つまりその彼氏を誘惑して、自分以外の女に落ちるかどうか確かめようってことなんだろう。

なんだってそんなこと……。
頭でもうったの?それともドッキリ?

「嫌だよ、わざわざそんなことしないで普通に聞いてよ」

「自信ないんだ?自分の彼氏の気持ちが、自分にあるって」

「自信ないとかじゃなくて、そんな騙すようなことしたくないの」

「ふーん。そう、私に女として勝てる自信がないのなら、無理にとは言わない」

なぜか異様に私を挑発してくる姉さんに。
以前は言われっぱなしの私だったけど、さすがに何年も一緒にいたら、いい加減言い返すことも覚える。

私たちの口論は彼氏のことから、仕事や果てはスタイルの話にまで発展し、収拾がつかなくなり。売り言葉に、買い言葉。

ついに私は言ってしまったんだ。

「……いいよ、分かった。
そこまで言うなら、その誘惑勝負受けてたつ」

~*~*~*~

うーん、ついつい受けてたつなんて言っちゃったけど……。
誘惑って、どうしたらいいんだろう?

同じアパートに住んでいる兄さんの部屋の前まできたものの、誘惑の方法に悩む私。

「あれ、どうしたの?ちょうど良かった。
そっち行こうとしてたんだよ」

「ミ、ミン……、おはよ。もうすぐラジオの時間だから、呼びにきたの。兄さんいる?」

部屋の前でウロウロしている不審者の私に声をかける、兄さんの同居人兼私の彼氏。

「いるけど、まだ寝てるよ。
今日は、兄さんたちとラジオ一緒なの?」

「そうそう。えっと……、ソンミンは私に何か用事だった?」

「あ、うん。
カスミにお弁当作ったんだ。
今日は早起きしたから、作ってみたんだ」

いくら振りとはいっても、これから他の男を誘惑しにいくことに罪悪感を感じていたら、語尾にハートマークが付きそうなほどの、甘えたような話し方でお弁当を渡される。

私より女子力が高い。

……私が兄さんを誘惑するってことは、この可愛い彼氏も誘惑されるってことだよね。

信じてないわけじゃ、ない。
でも……、全く不安がないかと言われたら……。

「信じてるからね、私はミンのこと信じてるから!」

「う、うん……。なにが?」

突然脈絡のないことを言い出す私を、くりくりの丸い目で見つめるソンミナ。

可愛い表情、可愛い話し方、お弁当。
なんか出来すぎてて嫌になる。

……あ、そうだ。これだ!これでいこう!

「お弁当ありがとう!
ソンミンも仕事がんばって」

自分の彼氏を見ていたら、誘惑方法が思いついたので、何か言いたげなソンミンを残して、兄さんの元へと急いだ。

~*~*~*~

「おはよう、どうしたの?」

「あ、兄さ……。お、オッパァ~。
オッパに会いたくてきちゃいました。え、えへ」

まだ起きたばかりなのか、着替えもしないで、リビングでトーストを食べている兄さんに近づく。彼氏を甘えたように呼ぶ彼女みたいにぶりっこしながら。

兄さん韓国人だし、昔見た韓ドラを思い出してやってみたけど、私がやるとだいぶぎこちない。

「兄さんに何か相談でもあった?
悩みがあるなら、仕事のことでも、人間関係でも恋愛でも、何でも兄さんに言ってね」

私の精一杯の誘惑をものともしないで、笑みを絶やさず妹扱いする兄さん。
悲しくなるくらいに、いつもの兄さんだ。

やっぱり、兄さんを誘惑するなんて無理かもしれない。いきなり、出鼻をくじかれて先が思いやられる。

~*~*~*~

「オッパ!オッパのためにお弁当作ってきたから、食べてください」

さっきは失敗したけど、今度こそ!めげずに、ラジオの収録が始まる前の控え室で兄さんにソンミンお手製のお弁当を渡す。

ソンミンごめんね。

「兄さんだけ?俺の分は?」

ソンミンに心の中で謝りながら、他のメンバーの言うことは聞こえなかった振りをする。

「美味しいよ。
けどこれ、カスミが作ったの?
いつも食べてる味と似てるような……」

「そ、そうですか?
ミンに料理教えてもらったからかな」

「仲良くしてるみたいで良かった。
メイリンにも教えてあげてほしいよ」

危ないところだった、同居中の兄さんにソンミン弁当は危険だった……。

仲良くしてるどころか、彼氏弁当であなたを誘惑しようとしてます、兄さん。

メイリンにも、か。兄さんって誘惑して揺らぐようなタイプじゃなさそうだし、どう考えてもやっぱり無理。

私に魅力が少ないって可能性もあるけど、どれだけ美人で魅力的な人でも無理だと思う。
兄さんって、笑顔で鉄壁の防御だから。

もうほとんど誘惑勝負をあきらめかけながら、ラジオの収録に入り、日韓の音楽を紹介するコーナーをいつも通りやっていると。

あ、次の曲、兄さんの元カノだ。

「次の曲は韓国人歌手の……」

台本をチラ見しながら、曲をかける前に紹介していると、私より早く曲名からどんな曲かまで説明する兄さん。台本も見ないのに、やけに詳しい。

「兄さん、もしかして前の彼女の新曲今も買ってるんですか?」

曲を流してる間、マイクを外して、兄さんに小声で話しかける。兄さんは一瞬かたまった後、何でもないことかのように笑顔でうなづいた。

「別に深い意味はないよ。
曲が好きで買ってるだけだから」

そっか、歌手として応援してるだけだったら……。うーん、でも、私だったら嫌だな。

これはメイリン姉が心配するのも分かる。
兄さんって、前の彼女のこと大好きだったみたいだし。
姉さんと付き合う前にも、それで色々あったみたいだから。

私は相手にもされてなかったけど、兄さんの心を唯一揺るがす人いた。

誘惑勝負するとは言ったけど、本気で二人の仲を引き裂くつもりはないし、むしろ気まずくなってほしくない。

姉さんに今日のこと何て報告しようか……。

~*~*~*~

仕事をこなし、真夜中に家に帰ると、部屋の住人とそれからソンミンがリビングにいた。

目が合うと、目をそらす姉さん、それから呆れたように私を見るソンミン。

「ただいま。あの、どうしたの?」

「……おかえり。どうだった?
兄さんは誘惑できた?」

……まずい、バレてる。
しかも、怒っていらっしゃる。

「何でそれを?じゃなくて、えっと……」

「メイリン姉から全部聞いたよ。
今日一日二人とも行動がおかしかったし、気づかれないとでも思ったの?」

だよね……、おっとりしてるように見えて、意外に鋭いんだよね。たまに怖いし。

「ミン、ごめんね……」

「いいよ、もう。話聞いてたら、メイリン姉がかわいそうになってきたから。
兄さんに直接言った方がいいよ」

姉さんと何の話をしていたのか分からないけど、そう言って兄さんに電話をかけるソンミン。

姉さんは止めたけど、用件だけ言ってさっさと電話を切っちゃったから、兄さんがくるのも時間の問題。

兄さんがくるまでの間、家を出ようとする姉さんをソンミンと二人してひき止める。

他の人には強気なのに、兄さんのことになると積極的だったかと思えばいきなり弱気になったりするメイリン姉。

女の私から見ても、そういうとこはすごく可愛い。兄さんにも伝わってると思うんだけどな。

五分もしないうちに兄さんが部屋にきたので、心配だったけど、ソンミンに二人にしようと手を引かれたので、席を立つ。

「大丈夫かなぁ、あの二人」

「大丈夫だよ。それより人の心配してる場合なの?」

リビングのドアを閉めて、廊下で待機しながらも二人の様子がやっぱり気になる。でも盗み聞きするのも趣味が悪いし……とウロウロしていたら、人の心配をするよりも自分たちの心配をした方が良かったみたい。

全身からブラックなオーラを発するソンミンさん。

さっきは姉さんの手前、ソンミンも許したのだろうけど、あれで全て解決するほど甘くはないことは分かってる。

「あ……、怒ってる?よね。
ソンミンの気持ちを疑ってたわけじゃないんだけど、引っ込みがつかなくなったっていうか」

「分かってる。いちいち確かめなくても知ってるだろうし。

僕の方が、カスミの気持ちが分からなくなっちゃったなぁ」

「うそ、知ってるくせに」

「分からないよ、あんまり言ってくれないし。
分からないから、教えて?」

さっきまでブラック全開だったのに、急にいつもの可愛い雰囲気に戻って、両手を握られる。

……策士だ。確かに私は口に出して好きとかあんまり言ったりしないけど、絶対分かってるのに。

でも今回は明らかに私に非があるからそんなこと言える立場でもないし、たまには口に出して言った方がいいのかな……。

「どんな風に、教えればいいの?」

意を決して口を開いて、そしてソンミンが答えようとした時。
リビングから姉さんの怒鳴り声が聞こえたので、あわててつないでいた手を離し、ドアを少し開けて、様子を伺う。

姉さんはかなりヒートアップしてる様子だけど、兄さんは穏やかにほほえみながら、メイリン姉の頬に触れた。

「兄さんの一番大切なもの?そんなことが聞きたかったの?
もっと早く言ってよ、聞かれたら毎日でも言うのに」

……お?兄さんの甘い言葉きそう?

人のことだけど、なぜか私までドキドキしながら兄さんの言葉を待つ。

「兄さんの一番大切なのは、もちろんMiracleのメンバーだよ」

……。兄さん、それはちょっとどうかと。
素敵な笑顔で思いきり外した兄さんに、ソンミンと顔を合わせて思わず苦笑い。

「……それって、私も入ってる?」

「もちろん」

「それならいい。
試すようなことしてごめんね、カスミたちも巻き込んでごめん」

こっそりのぞいていたのがバレていたようで、ふいに声をかけられたので、もう隠れていても仕方ないと廊下からリビングに出ていく。

「……姉さんはそれでいいの?」

「いいの、恋愛より何よりメンバーが一番な兄さんが、私の好きな兄さんだから。

兄さんが前の彼女に未練があっても、一番大切なものがメンバーならそれでいい」

メンバーの中に私も入ってるし……ってものすごくプラス思考なのか、寛容なのか。
結局は惚れた弱味なのか。

相手の気持ちを確かめなくても、結局兄さんがどんな答え出しても、どんな兄さんでも好きなんだろうな。

なんか無駄なことしたと急に疲れが出てきたけど、時にはこんなくだらないことにのってみるのも悪くないかもね。普段は言えないことが言えるチャンスかもしれないし。

二人が仲直りしたのを見届けた後、私は隣の彼氏にそっと愛の言葉を囁いた。

おしまい。

あとがき

今から四年前に書いたものですね……。 
ぐだぐだですみません( ω-、)
   
小説投稿サイトで本編として載せるほどでもないけど、ちょっと後日談やifストーリーを書きたい時はブログに載せています。  

ただいちゃついてるだけで特に意味もない話だったり、本編とは別の人とくっついてたりするifストーリーを書いたり、基本お遊びの要素が強いです。何でも許せる方向けです。
 
たまにですが、後日談などちょこちょこブログに載せていますので、もし何か気になる作品ありましたら、よろしければ読んで頂けると嬉しく思います。

優月
優月
それでは、またいつでもきてくださいね♡

 

創作活動, 短編・番外編

Posted by 春音優月